ブルターニュの玄関口、
レンヌの街へ
パリでの滞在を終え、
ブルターニュ地方の街レンヌへ向かった。
モンパルナス駅からTGVで約1時間半。
列車はあっという間にレンヌ駅へ滑り込む。
フランスに入ってから、
ストラスブール、コルマール、パリと、
どこか「華やかさ」を背負った街が続いていた。
その流れの中で降り立ったレンヌは、
驚くほど落ち着いて見えた。

この街には特別な観光地などはほとんどないが、
3泊する予定だ。
ブルターニュを訪れた最大の目的は、
オマール・ブルトンを現地で食べることだ。
そしてもう一つ、
モン・サン・ミシェル観光の拠点としても、
この街は都合がいい。
落ち着いた街並みと、
学生の街レンヌ

ホテルにチェックインしてから、
旧市街を中心に街を歩く。
ブルターニュ地方は
イギリス文化の影響が色濃く、
街並みや建物にも、
どこか大陸のフランスとは違う空気を感じる。
旧市街には、
15〜16世紀の木組みの家並みが今も残っている。

同じ木組みの家でも、
アルザス地方のものとは少し違う。
似ているようで、決定的に別の文化圏だ。
落ち着いた街だが、
レンヌはフランスでも有数の学生街でもある。
若い人の姿が多く、街には活気があった。

ブルターニュの
食文化と「ガレット」
ここブルターニュでは、
オマール以外にも食べてみたかったものがある。
それが「ガレット」だ。
この地方は痩せた土地が多く、
小麦の栽培に適さなかった。
代わりに蕎麦が広まり、蕎麦粉を使ったクレープ
食事としてのガレットが定着した。
一方で、
バターと砂糖を使ったクッキーも
「ガレット」と呼ばれる。
どちらが正解なのか。
調べてみると、答えは「どちらも正解」だった。
ガレットの語源は、
フランスの古語で「平たい石」。
つまり、平たく焼いたもの全般を指す言葉だ。
砂糖やバターをたっぷり使った菓子のガレットは、
それらが一般に手に入るようになった、
比較的近代の食べ物らしい。
今回食べたいのは、
蕎麦粉を使った、食事としてのガレットだ。

クレープとの違い
では、クレープとの違いは何か。
これも明確な線引きはないが、
一般的には材料と厚みの違い、
と考えられている。
フランスでは平たい焼き物は基本的にすべてガレット。
その中で、小麦粉を使い、
極薄に焼いたデザートが
クレープと呼ばれることが多い。
日本でイメージするクレープは、まさにそれだ。
つまり、
これから食べに行くガレットは、
「蕎麦粉のクレープ」と単純に言い切れるものではない。
クレープリーで食べる、
ガレット・コンプレット
『地球の歩き方』で調べた
クレープリーをラ・ロゼルを目指して歩く。
店の外のテラス席には、地元客が数組。

観光地然とした雰囲気はない。
昼下がりということもあり、
店内は比較的空いていた。
半屋外の、風通しのいい空間だ。
メニューにはいくつか種類があったが、
ここは定番の「ラ・コンプレット」を選ぶ。
ハム、チーズ、卵。
ガレットの王道だ。

歩き回って喉が渇いていたので、
ビールも一緒に頼む。
正直に言うと、
このガレット自体は、
日本で食べた専門店のものと
劇的な差を感じるほどではなかった。
悪くない。
ただ、「圧倒される」ほどでもない。
驚きは、デザートのクレープだった
まだきちんと昼食をとっていなかったこともあり、
デザートにクレープ・シュクレを追加で注文した。
極薄に焼かれた生地に、
バターと砂糖を乗せただけの、
驚くほどシンプルな一皿。

ほどよく付いた焦げ目が、いやに食欲をそそる。
一口食べた瞬間、思わず声が出そうになった。
――なんだ、これは。
砂糖とバターだけで、
どうしてここまで味が立体的になるのか。
ブルターニュから隣のノルマンディ地方は、
フランス屈指の酪農地帯だ。
乳製品が名産とは聞いていたが、
材料だけで、ここまで差が出るとは思っていなかった。
「フランスのバターは全然違う」
よく聞く言葉だが、
この一皿で、ようやく腑に落ちた気がした。
驚きという点だけで言えば、
正直、この旅の中でも指折りだったかもしれない。
「ここでしか食べられないもの」と再現欲
素材の違いに圧倒され、
「これはきっと、ここでしか食べられないものだ」
と、その場では思った。
それでも、
日本で手に入る範囲で、
可能な限り上質なバターを使ったなら、
いったいどこまで現地の味に近づけるのだろうか。
そう考え始めたら、
試さずにはいられなくなった。


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