シチリア最後のディナー
シチリア3日目。
アグリジェントから列車でパレルモに戻ると、すっかり夕方になっていた。
早いもので、これがシチリア最後のディナーだ。初日に訪れた、新市街にあるトラットリア・ジア・アンナへ再訪する。

案内スタッフも覚えていてくれて、にこやかに迎えてくれた。
シチリアで最後に食べておきたい料理があった。「魚介のクスクス」だ。シチリアの郷土料理が充実したこの店には、もちろんメニューに載っている。
前菜はフリット・ミスト(揚げ物の盛り合わせ)

エビ、イカ、ヒシコイワシのフリットにレモンを絞っていただく。衣が軽く、いくら食べてももたれない。中でもヒシコイワシが気に入った。
続いて、昨日に引き続きカジキのグリル。大きな切り身が、豪快にドンと出された。

——こういうのが食べたかった。
こちらもレモンを絞り、シンプルにいただく。香ばしく焼かれたカジキは、噛むと脂がジュワッと滲み出る。
このダイレクトな美味しさは、やはりここでしか味わえない。
そして、最後に魚介のクスクス。

魚介の濃厚なスープ(スーゴ)をかけながら食べるスタイルだ。
実はこの料理、以前レシピ本を見て作ったことがある。今回は、その答え合わせがしたかった。
スーゴの味は、南仏のスープ・ド・ポワソンを、トマト寄りに振ったような印象。それをたっぷり吸ったクスクスが、実に美味い。
——自分の作った魚介のクスクスは、間違っていなかった。
思わず心の中でガッツポーズをする。
夜のローマ通りを歩きながら
満腹のまま、ホテルへの帰路に着く。
明日は国内線でローマへ移動する。
あっという間だったシチリアでの滞在。その余韻に浸りながら、夜のローマ通りを歩いた。

出発前に、もう一つの市場へ
翌朝。
この日は夕方の便でローマへ向かう。
シチリアでの滞在も、いよいよ最後だ。
出発までは、まだかなり時間がある。
パレルモ中央駅のバスターミナルから空港行きのシャトルバスが発着している。駅構内の手荷物預かり所にスーツケースを預け、最後に街へ出掛けることにした。
最後の食事はどうするか迷ったが、やはり市場だろう。
パレルモ三大市場のうち、まだ訪れていないカーポ市場を目指す。
カーポ市場という中庸
Googleマップを頼りに歩くが、場所はやや分かりにくい。
付近に着くと、まず衣料品店がずらりと並ぶ。レモン模様や幾何学模様の原色の生地が並ぶ路地は、実に絵になる。

しばらく進むと、食料品店や簡易的なレストランが軒を連ねる通りに突き当たった。買い物客は多いが、ヴァッラロほど騒がしくはない。ヴァッラロとヴッチリアの、ちょうど中間のような雰囲気だ。
真っ赤な唐辛子、頭ごと並べられた大きなカジキ。ピスタチオ、ドライフルーツ、スパイス。
ここにも、シチリアが丸ごと詰まっている。




シチリアの味を、もう一度
目ぼしい店を見つけ、店先に並ぶ料理から好きなものを選ぶ。
カジキのインボルティーニ(串焼き)、
ピスタチオのパスタ、
オレンジのサラダ。
オレンジのサラダは、果肉と赤玉ねぎ、緑オリーブをオレンジの皮に盛り付けた一品。
「余計なことはしない」を体現したような味わいだ。
あまりに気に入って、日本に帰ってからも何度か作った。

カジキのインボルティーニは、パン粉、松の実、レーズンなどのフィリングを巻いたもの。
例の「シチリア味」だ。
付け合わせのカルチョフィ(アーティチョーク)も、なかなかの大盤振る舞い。

そしてピスタチオのパスタ。
濃厚なピスタチオクリームをまとったパスタが、丸ナスをくり抜いた器に盛られている。
惜しげもなく使われたピスタチオ。
さすが名産地だ。
……ただし、40代には少々ヘビーだった(苦笑)。

余韻を連れて、ローマへ
かなり満腹になり、カーポ市場を後にする。
パレルモ中央駅からシャトルバスに乗り、空港へ。
搭乗手続きを済ませ、機内へ乗り込む。
滑走路の向こうには、切り立った山と、その先に広がる海。
シチリアで過ごした時間を反芻しながら、ローマへと発った。


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