予定は決めず、パレルモの街へ
特に予定は決めず、気の向くまま街を歩く。
パレルモ中央駅の前を通り、新市街方面へ向かって歩いていく。
街のメインストリートのローマ通りをしばらく行くと、街並みの中に、不意に半円のアーチが現れた。
吸い込まれるように一歩足を踏み入れた瞬間、空気が変わる。

ここが、パレルモ三大市場のひとつ
ヴァッラロ市場だった。

まず耳に飛び込んでくるのは、大音量の音楽と威勢のいい掛け声。スピーカーから流れる陽気なリズムに重なるように、四方八方から叫び声が飛んでくる。
炭火で焼かれる肉や魚の煙が立ちこめ、市場全体が一つの巨大な厨房のようだ。
人の流れはまったく整理されていない。
観光客、地元の買い物客、立ち止まって食べる人、話し込む人。雑多な人混みが渦を巻きながら、それでも不思議と前へ進んでいく。
屋台、簡易レストラン、食料品店、衣料品、土産物。「何でもある」というより、「無秩序に全部ある」。
赤い唐辛子、銀色に光る魚、焼けた肉の焦げ色。原色のテントと看板、陽に照らされた果物。
色彩は過剰なほどで、目が追いつかない。


ここには、静けさも整理も節度もない。あるのはただ、人が生きているというエネルギーだけだ。
ヴァッラロ市場は、買い物をする場所ではなく、パレルモという街の体温を浴びる場所なのだと思った。
市場でつまむ、日常の味
丸ごと茹でられたタコ、生牡蠣、イワシやイカの揚げ物。とりわけシーフードが目につく。
どれも美味しそうで、全部食べてみたい。



ただ、朝食を少々食べ過ぎてしまった。
ここは軽めにしておく。
カウンターに並ぶ料理の中から、パネッレとアランチーノを注文した。
揚げなおしを待つ間、ビールで喉を潤す。この空気の中で飲むビールは、やけに美味い。
パネッレは、ひよこ豆のペーストを揚げたもの。コロッケのようでいて、まったく別物だ。素朴だが、ひよこ豆の風味がしっかり残る。

続いてアランチーノ。サフラン入りの黄色いリゾットの中に、ラグーが詰まっている。
見た目ほど重くなく、意外なほど軽い。

どちらも、観光向けに洗練された味ではない。だが、これこそが日常の味なのだろう。
「これからの食べ歩き、かなり楽しそうだな」
そんな予感を抱きながら、市場を後にした。


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