文明のパッチワーク、パレルモ大聖堂
パレルモの喧騒に身を置き、土産物屋が軒を連ねるヴィットリオ・エマヌエーレ通りを歩いていると、不意に視界が大きく開け、巨大な石造建築が姿を現した。
パレルモ大聖堂だ。

イタリア本土でこれまで目にしてきた、白亜のドゥオーモとは、佇まいが決定的に違う。
尖塔、アーチ、装飾の一つひとつが統一されておらず、どこか雑然としている。

だがそれが、この街には妙にしっくりくる。
この大聖堂は、シチリアの複雑な支配の歴史を、そのまま石に刻んだような存在だ。
もともとはキリスト教の聖堂だったものが、アラブ支配下ではイスラム教のモスクへと転用され、ノルマン王朝時代に再びキリスト教の聖堂として戻された。
一つの宗教、一つの文明ではなく、いくつもの時代と文化が上書きされながら残っている。
料理といい、街並みといい、パレルモは本当に興味深い街だと、改めて思う。
庭を一周し、街へ戻る。
大聖堂の内部には入らず、外周の庭をぐるりと一周して見て回った。
屋上テラスにも上れるらしいが、入口には長い行列ができていたので、今回は見送ることにした。
再びヴィットリオ・エマヌエーレ通りへ戻り、ローマ通りの方角へ歩き出す。
強い日差しに耐えかね、途中でフレッシュオレンジジュースを購入した。目の前で搾ってくれる一杯が、驚くほど美味い。
ヴィットリオ・エマヌエーレ通りでの買い物
パレルモでの買い物時間。
この通りは、パレルモの中でも特にショップが充実しており、ショッピングにはうってつけだ。
滞在最終日には、シチリア名産のレモンやピスタチオを使った菓子、定番の食材土産などを、ここでまとめて購入した。



シチリアの陶器、マヨリカ焼き
シチリアでは食べ歩きとは別に、もう一つどうしても手に入れたいものがあった。
それが、シチリアの伝統陶器「マヨリカ焼き」だ。


マヨリカ焼きは、白い釉薬の上に、青・黄・緑などの鮮やかな色彩で植物や幾何学模様を描いた陶器で、その起源は中世、イスラム文化の影響を色濃く受けている。
実用品でありながら、どこか素朴で、そして華やか。シチリアの気候や食文化によく似合う器だ。
通り沿いには、マヨリカ焼きを扱う店がいくつも並んでいる。
一軒ずつ覗いていくが、なかなか「これだ」と思える店に出会えない。
「ここだ」と思えた一軒
そんな中、少し古びた佇まいの店に辿り着いた。
中へ入ると、店内いっぱいにマヨリカ焼きが並んでいる。圧倒されるほどの物量だ。
店を切り盛りしているのは、おばあさんが一人。
この瞬間、心の中で確信した。「ここだ。」
おばあさんに声をかけ、一枚一枚手に取って見せてもらう。絵柄もサイズも微妙に違い、どれも魅力的だ。
悩みに悩み、最終的に大皿を3枚、小鉢を2つ購入した。
器が連れ帰る、シチリアの記憶
もちろん、ガムテープも緩衝材も、日本からしっかり持参してきた。旅の後半で割れるわけにはいかない。
日本に帰ったら、この皿にシチリア料理を盛り付けるつもりだ。
旅は、帰国した瞬間に終わるわけではない。
器一つで、またあの街へ戻れる。そう思うと、帰国後の食卓が、今から少し楽しみになってきた。


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